2012年2月22日水曜日

大阪維新の会による維新八策について(2)

ちょいと時間がたってしまいましたが、今回は前回の続きで維新八策の中から数点に絞って考えてみます。
  1. イスラエルにおける首相公選制の失敗例について
  2. ベーシックインカムと年金について
  3. 参院を廃止することについて
  4. 憲法改正について
1.イスラエルにおける首相公選制の失敗例について
イスラエルでは1992年に首相公選制を法律で制定して1996、1999、2001年と3回実施しましたが、期待した効果がなかったので辞めちゃいまいました。イスラエルはクネセトと呼ばれる一院制の議会があるんですが、その選挙制度は完全な比例代表制です。内閣不信任決議のような議院内閣制の基本的な事をそのままにしていました。結果、イスラエル国民は首相選挙では指導力や実行力を、議員選挙では自分の支持政党を選んだので、少数政党が乱立することになり、国民が選んだにもかかわらずクネセトによる不信任の可能性もあるので、首相の指導力が余計に損なわれることになりました。
日本で実施したら、違う結果になるのでしょうか。完全な比例代表制ではないから大丈夫という方もおられますが、はたしてそうでしょうか?日本でも同じ事が起るでしょう。首相には指導力を、議員には現実的な利益を。自然な流れだと思います。
では、首相公選制は成り立たないのか?というとそうではありません。アメリカの大統領制のように行政機関の長を選挙で選ぶ国家はあります。日本には天皇陛下という国際的に国家元首として扱いを受ける方がおられるので大統領という言葉にはなりえませんが。議院内閣制をとる国と違いアメリカではかなり厳格に三権分立が確立されています。アメリカの大統領には議会で決めた法案を拒否する権利がある一方で、法案を提出する権利がありません。行政府が必要な法案は、教書と言う形で議会に依頼するということになります。大統領も議会も国民の信任を得て独立した正統性をもっていますので、同等だという考え方です。一方で日本はイスラエルと同じ議院内閣制です。首相の正統性は国民により選ばれた議会が与えることになります。憲法で議会を最高国権としていることも、ここにあります。また、一般的に議院内閣制では党議拘束が強くなり、大統領制では弱くなります。
首相公選制だけを現在の日本に採用しても、百害あって一利なしになる可能性が大きいかと。それを、防ぐ手だてを大阪維新の会は示す必要があるのではありませんか。

2.ベーシックインカムと年金について
ベーシックインカムについては以前、書きましたが、生活保障を一元化するものです。ベーシックインカムを行い、かつ年金もなんてことはありえません。これは、ハッキリさせた方が良いと思います。政策理念なのですから、並び立たない方策を掲げるのはおかしいと思います。

3.参院を廃止することについて
参院を廃止して独立した地方行政府の代表会議をつくるとのことです。維新の会のみなさんは、ドイツの地方行政をモデルにしているのでしょう。ドイツでいわゆる上院の機能をしているのが連邦参議院です。連邦参議院の構成員(議員ではないので)は、州政府の代表者となっています。法案毎にその代表者も代わるようです。歴史的に統一国家ではない期間が長く、統一されていても諸侯や王国の連邦制となっていたドイツらしい制度といえます。では、この地方代表者会議の権限は、ドイツと同じように州に関係する法案だけを審議するんでしょうか?議会の改廃を議論するには、その権限をどうするかということが最も大事です。形ではなく内容です。

4.憲法改正について
憲法を改正する議論はあって良いと考えていますが、第96条を変更だけやろうというのはどうかと思います。なぜなら、維新八策では憲法改正が必要だと思える箇所が何点もあるからです。憲法改正を容易にする第96条の改正だけを目指すと言うことは、政策理念として掲げたものを実現しようとすることと矛盾します。すくなくとも、維新八策に掲げた政策を実現するための憲法改正方針を示すべきだと思います。海外では憲法改正(アメリカは修正条項を追加する)は多くの事例があるにもかかわらず、なぜ日本では起きなかったのかを考えると、第96条の問題ではないのではないですか?憲法第96条に国民投票の規定があるにもかかわらず、つい最近まで実施する法律を作ってこなかったり、憲法だけではなく法律においてもそうですが、改正議論ではなく条文の解釈議論でごまかしてきたことが、その最大の原因ではないでしょうか。

まとめ
長々と書いてきましたが、要は見出しではなく中身じゃないの?っていうことです。もちろん、これからどんどん肉付けされていくものと期待はしています。ことごとく、専制・独裁を封じるための議院内閣制の機能を奪うんですから、その代わりとなる内容を示さないと、志位さんのヒトラーみたいっていう訳のわからない批評が当てはまってしまいます。。。
追記:今日、新聞に維新政治塾の講師に高橋洋一先生がっていう記事が出てました。。。学術的に論破することなんて、私にはできないんですが、この人の政策はあまり支持できません。効果については反論できないんですが、「良薬、口に苦し」じゃなく「良薬、口に甘し」で国民や政治家にとって甘い麻薬みたいな政策だと思えるんですよね。。。毎年、一年限りの特別な法律で赤字国債を発行し続けてきた政治家さんたちに甘い麻薬は危険すぎると思います。

2012年2月15日水曜日

大阪維新の会による維新八策について(1)

今回は大阪維新の会が発表した政策について考えてみたいと思います。

維新、志士、海援隊と、ほんと好きなんでしょうね明治維新がw 坂本龍馬好きの私としても、眉唾物の言葉ばかりです。

そんなことはさておき、まずは大阪維新の会があやかった、坂本龍馬(諸説有り)の船中八策とはどんな物だったんでしょう。

  1. 政権を朝廷に返せ。
  2. 上下の2つの議会を作って、議論する事により政治を行え。
  3. 有名無実の人間を政治から除いて、良い人材に官爵を与えて使え。
  4. 外国とは対等に付き合え。
  5. 古い伝統と新たな考え方とを折衷し、憲法を制定せよ。
  6. 海軍を拡張しろ。
  7. 親兵を設置して帝kを守れ。
  8. 通貨の交換レートを統一しろ。

2と8なんか、当時の人らは?(゚_。)?(。_゚)?だったでしょうw 私は5の「古来ノ律令ヲ折衷シ、新ニ無窮ノ大典ヲ撰定スベキ事。」がスゴいと思います。新たな憲法を作らなければいけないけど、ちゃんと伝統も折衷しろと書いてあります。

さて、大阪維新の会の維新八策はどんなものでしょう。

  1. 統治機構改革
    • 大都市制度
    • 地方分権の推進
  2. 行財政改革
    • プライマリーバランスの黒字化
    • 議員定数、歳費の削減
    • 人件費の3割削減
  3. 公務員制度改革
    • 職員基本条例案の法制化
  4. 教育改革
    • 教育委員会の設置を選択制
  5. 社会保障制度
    • 年金を掛け捨て制と積み立て制の併用に
    • ベーシックインカムの導入検討
  6. 経済・財政
    • TPPへの参加
    • 直間比率を間接税の消費税に重点化
  7. 外交防衛
    • 日米同盟にオーストラリアを加える
    • 沖縄の負担軽減
  8. 憲法
    • 首相公選制の導入
    • 参院を廃止して首長が代表の議院を設ける
    • 憲法を改正しやすいように発議要件を低くする

だそうです。

これに対する主な公党の反応がこちら。

http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220214042.html

民主党は、憲法改正にかかる問題は、現実性がない。。。さすが、憲法改正と関係なくても現実性を伴わないマニフェストで政権を取った政党ですw

自民党は、言うのは簡単。。。さすが、やらなきゃならんことを言わずに棚上げしつづけて、政権を奪われた政党ですw

公明党は、いささか性急すぎる。。。既存の政治のスピード感のなさが、こういった政策理念を産む背景である事を全く理解してないようですw

こんな公党の意見は置いといて、私の意見は。。。

こんな、骨格だけで判断できないよ。。。

設計図はともかく基本構想ぐらいは示してもらわんと、賛否決めかねるんですけど。。。少なくとも、首相公選制なんてイスラエルで失敗してるという先例があるんだから、ちゃんと失敗しないように考えてる事を示さないと。。。

しかし、この骨格だけでもツッコミどころはありそうです。次回エントリでは、以下の数点に絞って書きたいと思います。

  • イスラエルにおける首相公選制の失敗例について
  • ベーシックインカムと年金について
  • 参院を廃止することについて
  • 憲法改正について

2012年2月6日月曜日

ベーシックインカムについて考えてみた(2)

前回のエントリで、実現不可能ではないことを確認しましたので、今回は影響を考えてみたいと思います。前回のように数値では示すことができない考え方の問題なので、他サイトでの批判派、支持派の意見を列挙しながら私個人の考えを書いていこうと思います。

たいていのベーシックインカムを扱ってるサイトでは、労働の問題があげられています。反対派さんの主張はこんな感じです。

  1. 働かざるもの食うべからず。
  2. 働かない人が増える。
  3. 3K職場で働き手が見つからなくなる。

これに対して支持派は、

  1. 全員が無理に働かなくても大丈夫なほど生産性は向上している。
  2. この程度の支給額では辞める人は多くない。生活が保証されるので、自分に合った労働を見つけることが出来る。
  3. 労働に見合った賃金になる。

1.の「働かざるもの食うべからず」は、これは、社会通念上は必要な考え方だとは思いますが、政治・政策を考えるときは危ない考え方です。行政が、働く意志が無いから生活保護を打ち切るなんてことはできないし、行政のそういった恣意的行動は危険です。これに対する賛成派サイトの生産性うんぬんはどうかと思いますけど。。w

次に2.3.はどうでしょう。。。はっきり言って、わかりませんw ベーシックインカムにより労働者の働き方は変化するでしょう。、企業側も社員の生活保障する必要が無くなり解雇しやすくもなるでしょう。労使双方から生活というキーワードが抜けたとき、労働市場がどういう変化を起こすかは私にはわかりません。ただ、最初はかなり乱高下するでしょうが、徐々に市場原理が働いて、どこかに収束していくことになると思います。FXでも株でも何か大きな変化があれば市場は乱高下しますが、徐々に落ち着いていくのと同じです。問題はその収束点です。前回のエントリで所得税(税率50%)で賄うことを前提としました。所得税の対象となる総所得が減少すれば税率をあげなければなりません。いや、もしかするとベーシックインカムで必要な金額を総所得が下回ることもあるかもしれません。こうなれば、現在、実現可能なベーシックインカムもできなくなります。こればっかりは、どんな考え方で人々が行動するかが問題となるので、やってみないとわからないって言うのが、正直、私の考えです。

ベーシックインカム、理念は良いがどうなるかはわからない。しかし、欧米ほど個人主義が強くなく、勤労美徳を尊ぶ日本で実現できないなら、他のどの国でも出来ないでしょう。

 

あとがき

文章力の全く無い理系人間が、なぜ、前回、今回とベーシックインカムをテーマに長文のブログを書いたのか。それは、結婚していない単身の叔母(88歳)が自宅でこけて、急性硬膜下血腫で入院生活に入り、私が面倒を見ることになったからです。叔母は基礎年金だけではなく厚生年金も少しばかりあるので、最低生活では無いのにも関わらず介護支援センターからは生活保護の申請を勧められていたみたいです。現実的に単身生活に戻るのは不可能な状態ですが、年金だけで終の住処を探すのは困難です。医療費が嵩むようになれば生活できない。これでは、年金制度そのものの意味が無いしセーフティネットとして機能していない。そう考えてたときに、人口推計のニュースが飛び込んできました。今から50年後には人口が4000万人減って8700万人に。そして、その4割が65歳以上。なにかアクションを起こさなければ娘たちの時代にはとんでもないことになる。既に破綻しているように思える現在の制度を消費税を上げて継ぎ接ぎする意味があるのか?そんな思いで書いてみました。みなさんが、子供、孫世代への責任について考えるきっかけとなれば幸いです。